【070623】

 昨日の反省が全く活きていません。
 
 夜に入って……。
 衣服をあらためた明智光秀が、ただ一人で社殿に参籠した。
 名目は、
<戦勝祈願>
 である。
 神前の灯明を見つめたまま、光秀は両目を閉じ、塑像のようにうごかない。
 そのうちに、小太りの躰がわずかにゆれうごき、深い吐息がもれる。
 そしてまた、うごかなくなる。
 光秀の家来たちや、織田信長が、この光秀を見たなら、
(これほどまでにこころをこめて、中国攻めの勝利を祈っているのか……)
 と、感動をおぼえたろう。
 やがて……。
(文春文庫『忍びの風(三)』:池波正太郎)

 光秀が愛宕神社で祈願したのは、信長に命じられた中国征討のことではないことは、歴史に聡い人ならご存知だろう。

 で、だ。
 いやべつになんの祈願をしたいわけではなく、上のシーンを覚えていたので、他に何の予備知識も無しに、愛宕神社に詣でてみることにした。

 先2日間とは打って変って晴れ上がったこの日。清滝川の流れの爽快さと、日を透かすもみじの青さに気分を良くし、一の鳥居に辿り着き、これをくぐる。

 他の参拝客……もとい、登山者の何倍もの時間をかけ、それでも体を励まして登ってはみたものの……。



 ゴメン。マジもうムリ。
 昨日に引き続き、いや、昨日どころではなく今日のはもう完全に登山で、まこと情けない話なのだが、しかしここで引き返して正解。
 下りにも難儀したなんて、いままで無かった事だ。ここまで衰えていようとは……。 ||OTL

 やっとの思いで山から逃げ出し、折りよく到着した帰りのバスに飛び乗って帰還。
 観光が苦行になってしまった。
 
 部屋に戻り一休みした後、どうにか外に出れそうだったので、晩飯を取りに市街へ。
 とはいうものの、チェックを入れてあるところまで電車やバスに乗って行くほどの元気には回復していない。
 で、駅周りを徘徊し、結局居酒屋に入る。

 ビール1杯だけにしたが、思いの他胃に物が入った。
 最初に頼んだ牛筋の煮込み。
 さすが京都というか、牛筋と大根、あとは分葱をたっぷりまぶしただけのシンプルなものだったが、それゆえに美味い。
 スジと大根の甘味がクッキリと良く出ていて、醤油も味噌も使っていないだし汁が、その自信の程をさらに際立たせていた。

 他も色々と美味く、飛び込みの店で当たりだったのに昼の過労も忘れて満悦。

 刺身のメニューに「よこわ」というモノを発見。
 何の魚か見当が付かないので、板さんに訪ねると、マグロの若魚だそうな。
 ……「めじ」のことか?
 まあ、どっちにしろ食べたことの無い代物なので注文。
 うむ、さすがに若い肉、トロとは違った滑らかさと柔らかさだ。
 しかもこの肉も甘い。若魚だからかと思ったがさにあらず、一緒に並んでいた赤身にも十分な肉の甘味が。
 久々に味の濃い赤身を食べた。

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